距離を縮めて
友達から恋人へと関係が変わる。
恋人になれて嬉しい反面、不安もあった。
特には仲の良い友達だったからこそ今までとは違う事に慣れず少し緊張もしていたけど、俺よりお前の方がそう思っているのは見ているだけでも分かった。
付き合う前は意識していなかったのもあってか普通に話せていたのに、それがまるで嘘の様に変わっていく。
無意識なのかもしれないが話をしている途中で目が合わなくなるなんてよくある話だ。
あまりにもそっけないから初めは何かしてしまったのかと心配になった。
けど不自然な態度のワケが俺と同じでまだこの関係に慣れていないと分かり、嫌われていないからと少しホッとした。
でも、正直言えばつらい……。
お前に触れたいと思ってしまうから。
今もお前に近づき、見つめようとすると顔を逸らされた…。
「こ〜ら、顔をそむけるなよ。こっちを見ろ」
「別にそむけてないよ……」
目が泳いでいる。分かりやすくて思わず笑いそうになる。
「ホントか〜?なら、どうしてそんな顔をしてるんだ?」
「あっ今、笑ったでしょ?人の顔を見て笑うなんて久遠はひどいよね」
ごめんと謝りつつ少し怒った顔も可愛いと思ってしまうのだからどうしようもなく好きでしかたがない。
だから俺は嫌われない様に程良い距離を取ってしまう。
こうやってふざけあっている時は前みたいに話してくれるのに、いざ二人きりで恋人としての時間を過ごそうと思うと上手くいかない。
話を切り替えて真剣な顔でと向き合えば、また緊張した顔をしていた。
落ち着かせようと優しく頭を撫でる。
「が嫌だったら言ってくれて良いからさ。俺についても知って欲しい」
今更で照れ臭いと思うが、俺の気持ちを口に出してみる。すると、驚いた顔をされた。
「もしかして、久遠も緊張してるの?でも、付き合う前と変わらないし……」
「俺だって緊張してるよ。の前では見せない様にしてるからそう見えていないだけ」
出来ればカッコ悪いとこは見せたくないし。お前にもっと近づきたい気持ちの方が強いから多少なりとも無理をしてしまうのは当然だ。
だから友達以上の関係じゃなくて恋人になりたかった。
「えっ、余裕なのかと思ってたよ。いつも私だけ緊張しているみたいでどうしたら良いのか分からなかった。それと、久遠は二人でいる時はいつもの久遠じゃない気がして……変な感じがして……」
「あのな、俺だって好きな女の子の前では緊張したりすんだぞ。それでも、こうしてと一緒にいたい。それに、今の俺は恋人であるお前だけに見せる姿なんだよ」
「…私だって久遠と一緒にいたいよ。もちろん、恋人としてだからだよ」
それに久遠以外にはこういう気持ちにならないし…と小さい声が聞こえて嬉しくなる。
手を掴むと引き寄せた。
少しずつで良いから距離を縮めていきたい。
驚いたお前の目と目が合う。
まだ照れた顔のお前を見ながら伝えたい事を言葉にする。
「、愛してる」
それから私も、と言うお前からの返事でまたも俺は嬉しくなって恋人といる幸せに浸っていった。
2015.4.1 世莉企画TOPへ戻る