酔いから覚める
久しぶりにに会えると少し楽しみにしてたオフの日
それが、空いてるか聞けば予定が入っていると言って断られた。
せっかくの休みなのに今頃、は何してんだろうと思う。
そういえば、今日は大学の友達と飲み会だと言っていたのを思い出す。
普通は俺を優先するでしょ?って何度も言いそうになった。
でも相手はだから我慢する。
それは女だけの集まりじゃなくて、もちろん俺の知らない男ばかりいる。
嫉妬はしていない。ただ心配なだけだし。
気にしていない様に自分に言い聞かせていると、久遠からの連絡で飲み会が終わり今から帰るらしいという内容のメールに書かれた場所を見て急いでそこへ向かう。
そこには俺の知らないがいた。
少しアルコールの匂いがする。よく見ると火照った顔をしていた。
「…え、つむぎ君?どうして、ここにいるの?」
頭が追いつかず、時が止まったみたいに固まっているへ向き合う。
「を迎えにきた」
まだ混乱しているのを気にせず、少し強引に手を掴む。
「あれ?場所って言ってたっけ?」
「聞いてない。だから久遠に教えてもらった」
場所までは教えてもらってないから聞けなくて、その時は何でもない振りをしてた。
たまたま久遠が飲み会のメンバーと知り合いだから教えてもらった。
こういう時に同じ大学へ通っている顔が広い知り合いがいると助かる。
聞かれた質問に答え終えると会話は途切れた。無言のまま俺が手を引いて前を歩くから気まずい空気が流れる。
「…つむぎ君、怒ってる?」
こんな事でいちいち怒ってたらキリがねーし、俺も邪魔しちゃいけないと分かってる。
「…別に怒ってねぇよ。いつも迎えにいける訳じゃないから、あんたに何かあったらと思うと出来るなら迎えに行きたいし…が心配なんだよ」
「うん、分かった。迎えにきてくれて、ありがとう。今日は誘ってくれたのにごめんね」
気にしていないと伝えると喜んでいた。
「…やっぱ、飲んでたんだな」
「お酒臭いかな?」
俺の言葉で急に自分の匂いを気にし始める。
「別にくさくないから」
「そっか。いつもより軽く飲んで良かった」
安心したみたいだ。
「でも、酔っぱらいの介抱だけは勘弁だけどな」
本当は思ってないのに言葉にすると違う言葉になってしまう。
素直に言えない自分をダサく感じつつ、さっき軽く飲んだと言っていたのは普段ならもっと飲むという事なのかと考える。
酒を飲んで絡まれたとしてもこいつなら嫌じゃないけど、絶対に俺の前では飲まないから改めて大人なんだと思い知る。
また、飲むとこうなるのかと新しい発見をした気分だった。
「大丈夫だよ。飲み会で飲む事はあっても、つむぎ君にそんな所は見せないからね」
言い切るぐらいに意思は強いみたいだ。場所を教えなかったのはそういう訳なのかと思う。
彼氏の俺にも隙を見せたりしないから絶対に酔った振りして誘う様なタイプではない。
「もしかして、俺に見られるのが嫌なの?」
「酔った所なんてだらしないから。できれば、彼氏には見せたくないよ」
「へぇ、俺に見せられない顔を他の男の前では見せるんだ?」
顔を近づけると吃驚した様で慌てて否定する。
「ううん、そんな事ないよ!」
「なら、良いけどさ」
俺の隣を歩きながらは急に数字を指折り数え始める。最後に20と言って俺を見た。
「つむぎ君が成人を向かえるまではまだ先だね」
「早く大人になれれば良いけど、こればっかりはすぐにと言えないからな」
「大丈夫だよ。私、何年でもずっと待ってるから!」
「は?待つ?」
「だから、つむぎ君が成人したら一緒にお酒を飲もうよ」
「お、おう」
「絶対だよ。約束だからね」
そう言っては嬉しそうに笑った。
数年先なんてどうなるか分かんねーし確かなものなんて一つもないけど、が言うとそう思えてくる。
今はその言葉を信じられるし、信じたいと思った。
俺も嬉しくなって自然と笑いそうになっている事に気づく。
バカみたいにその時を待ち望んでいる俺がいた。
2015.5.10 世莉企画TOPへ戻る